だから、ひみつの薬。

近所に「トプカ」というカレー屋さんがある。
ひげのおじさんと、長身のお姉さんがやっている、感じのいいお店。
味がまた、辛いけど感動的に旨い、私のひいきの店だった。
トプカは神田に本店を持つわりと有名な店だが、本店よりもこの支店のほうが絶対に美味かったと思う。
そこにひさしぶりに行ったら、
おじさんもお姉さんもいなくなっていた。
バイトらしき女の子に、「おじさんは他の店に移られたんですか?」と聞いたら、
「はあ…。」みたいな気の抜けた返事で、
なんだかそれ以上くわしく聞く気がなくなってしまった。
店の気分を作るのは、人だ。
そしてもちろん、味も。
先代の味を模倣したのだろう、似たカレーではあったが、
以前の味との差は歴然としていた。
料理は魔法だから、簡単には真似できない。
ひげのマスターとお姉さん、今はどこにいるんだろう。またどこかで会えるといいな。