言葉の将棋指し

砧中央病院 (仮名) 精神科での実習は昨日終わった。
小平先生 (仮名) にくっついて、外来と病棟を見学するのが主な日課だった。
精神科外来は、言葉による勝負、という印象だった。
精神科外来における言葉は、それ自体が検査であり、それ自体が治療でさえあるのだ。
鬱に、不安に、怒りの強いボーダーライン (恐かった) に、それぞれに使ってはならない言葉があり、また適切なタイミングで適切な内容を適切な言い回しで言わないと言葉の効果は発揮されない。
やや極端なまでに感情を抑制したトーンで話をする小平先生。
しかし、外来で面接をする彼の姿は、一手一手を選んで詰みを探す、将棋指しのそれに見えた。