食べるな危険

たまには医療の話を。


具合が悪いとき、「食べないと治らない」と思う人は、けっこう多いようで、
無理に食べたり食べさせたりして、胃潰瘍や腸閉塞を悪化させたり、
吐いてしまって誤嚥性肺炎*1を作ってしまってやって来る人が、救急外来にいると後を絶たない。
「病気と闘うために栄養が必要」という考え方は、まったくの間違いではないにせよ、優先度は低い。
基本的に、食べる気が起こらないときは、食べないほうがいい。
消化・吸収とは、健康なときにはなにげなく行っているが、じつはかなりたいへんな作業である。食べる気が起こらないというのは、その機能が衰えているということの、体が発するサインだと考えていい。
そんなとき無理して食べると、ろくなことはない。
「食べると治る」のではない。「治ったら食べられるようになる」のだ。
食べたくないときは、ポカリスエットで水分だけ摂ろう。栄養よりも水が大事
水も飲めないときは、、、病院に行きましょう。点滴1本で治ることも多いし、逆に、とんでもない病気がないともかぎらない。


以上はもちろんたいへんおおざっぱな議論であって、
食べて病気が治ることも、それは、ある。
ただ、食欲がないときに、その原因が診断されていない段階では、「食べない」より「食べる」ほうがより危険、ということだけは言える。
悪いところがお腹のような気がするなら、なおさらだ。
自分が元気な人は、「食べないと治らないぞ」とか言って食べさせようとしがちなので、
その被害者にも加害者にもならぬよう、皆様気をつけましょう。


しかし、この日記読んでるの大半が医療関係者だと思うので、
私は誰に向けて言っているのかいまいち謎だ。

*1:食物や胃液が気道に流入することによって起きる肺炎