姑息

「姑息 (こそく)」という言葉は、「間違って使われている日本語ランキング」があったら、まちがいなく上位に入ると思う。日本人の 8割くらいが間違えているんじゃないだろうか。
ご存知だろうか? 「姑息」とは、「一時しのぎ」という意味である。それだけだ。「卑怯」とかいう意味ではないのである。

こそく【姑息】〔「姑」はしばらく、「息」はやむ意〕根本的に解決するのではなく、一時の間に合わせにすること(さま)。(三省堂大辞林 第二版」)

たとえばこの Flash 「そして伝説へ・・・」ドラクエのパロディでなかなか面白いが、最初の母親のセリフの「姑息」の用法は完全に間違っている。そもそも「姑息な男の子」などという言い方は無い。しかしこれに全く違和感を感じない人のほうが、むしろ多いのではないだろうか?
かく言う私も、わりと最近まで間違えていた。そのことに気づいたのは、医学書で「姑息的手術」という表現を見たときだった。これは例えば遠隔転移した癌などで、根治を見込まず、当面の症状緩和を目的に行う手術を指す。根治は望めないといっても、その患者にとって最善だから手術するのであり、ちゃんと効果もある。もちろん、卑怯な手術ではない (余談だが、卑怯な手術とはいったいどんな手術か、想像するとなんだか可笑しい)。
そんなわけで、医学部で「姑息」の意味を覚えた私だが、某有名脳外科医が、患者への治療法の説明にこの語を使っていたのにはびっくりした。

Dr.M: この病気の場合、手術以外の治療法は、いずれも姑息的です。

いや、患者には意味わかんねえだろう、それ...。
下手すると「脳外科以外の医者は卑怯者です」くらいの意味に取られてるぞ。